RSウイルス感染症について

RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染による呼吸器の感染症であり、0歳児や1歳児など小さいお子さんを中心に発症します。
全国では、例年、冬期に発生のピークが見られますが、平成23年以降、7月頃から増加傾向にあり、平成25年も夏頃から徐々に増加しています。山形県内においても、同じような傾向が見られており、注意が必要です。

厚生労働省では、RSウイルス感染症の説明、注意事項などについて情報提供を行っています。

以下、厚生労働省ホームページ「RSウイルス感染症に関するQ&A」からの抜粋です。


Q1 RSウイルス感染症とはどのような病気ですか?

A1 RSウイルス感染症(respiratory syncytial virus infection)は、RSウイルスの感染による呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発病を繰り返しま すが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児がRSウイルスに少なくとも1度は感染するとされています( 国立感染症研究所 ホームページ:IDWR2013年第36号<注目すべき感染症>RSウイルス感染症参 照 )。症状としては、軽い風邪様の症状から重い肺炎まで様々です。しかしながら、初めて感染発症した場合は重くなりやすいといわれており、乳期、特に乳児期 早期(生後数週間~数カ月間)にRSウイルスに初感染した場合は、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあります。そのため、特に乳児期 早期(生後数週間~数カ月間)のお子さんがいらっしゃる場合には、感染を避けるための注意が必要です。

Q2 今年(平成25年)のRSウイルス感染症の発生状況はどのような状況なのでしょうか?

A2 RSウイルス感染症は例年冬期に報告数のピークが見られ、夏季は報告数が少ない状態が続いていましたが、2011年以降、7月頃から報告数の増 加傾向がみられています。2013年の報告数は第28週から徐々に増加傾向がみられ、特に第34週から第35週にかけて急激な増加がみられました。今後の 地理的な広がりや年齢分布、重症例の発生などの動向について、さらなる注意が必要です。

Q3 RSウイルスはどのように感染しますか。

A3 RSウイルス感染症はRSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、又は会話をした際に飛び散るしぶきを浴びて吸い込む飛まつ感染や、感染して いる人との直接の濃厚接触や、ウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を触ったり又はなめたりする ことによる間接的な接触感染で感染します(国立感染症研究所 ホームページ:IDWR2013年第36号<注目すべき感染症>RSウイルス感染症参照 )。
RSウイルスが麻疹や水痘、結核のように空気感染(飛沫核感染)するといった報告はありません。

Q4 RSウイルスに感染すると、どのような症状が出ますか?また、感染してからどのくらいの時間で発症しますか?

A4 通常RSウイルスに感染してから2~8日、典型的には4~6日間の潜伏期間を経て発熱、鼻汁などの症状が数日続きます。多くは軽症で済みます が、重くなる場合には、その後咳がひどくなる、喘鳴が出る、呼吸困難となるなどの症状が出現し、場合によっては、細気管支炎、肺炎へと進展していきます。 初感染乳幼児の約7割は、鼻汁などの上気道炎症状のみで数日のうちに軽快しますが、約3割では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難症状などが出現します。低出生体 重児や、心臓や肺に基礎疾患があったり、神経や筋肉の疾患があったり、免疫不全が存在する場合には重症化のリスクは高まります。重篤な合併症として注意す べきものには、無呼吸発作、急性脳症等があります。生後1か月未満の児がRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合が あり、また突然死に繋がる無呼吸発作を起こすことがあります。
RSウイルスは生涯にわたって感染を繰り返し、幼児期における再感染での発症はよくみられ、その多くは軽い症状です。
成人では通常は感冒様症状のみですが、RSウイルスに感染した小児を看護する保護者や医療スタッフでは、一度に大量のウイルスに曝露して感染することに よって、症状が重くなる場合があります。また、RSウイルスは高齢者においても急性のしばしば重症の下気道炎を起こす原因となることが知られていて、特に 長期療養施設内での集団発生が問題となる場合があります( 国立感染症研究所感染症疫学センターホームページ「感染症の話:RSウイルス感染症」参照 )。

Q5 特に感染しないように注意すべき人はどのような人ですか?

A5 感染によって重症化するリスクの高い基礎疾患を有する小児(特に早産児や生後24か月以下で心臓や肺に基礎疾患がある小児、神経・筋疾患やあるいは免疫不全の基礎疾患を有する小児等)や、生後3か月以内の乳児への感染には特に注意が必要です。

Q6 感染しないようにするために、どのようなことに注意すればよいですか。

A6 RSウイルス感染症の感染経路は飛沫感染と接触感染で、発症の中心は0歳児と1歳児です。一方、再感染以降では感冒様症状又は気管支炎症状のみ である場合が多いことから、RSウイルス感染症であるとは気付かれてない年長児や成人が存在しています。従って、咳等の呼吸器症状を認める年長児や成人 は、可能な限り0歳児と1歳児との接触を避けることが乳幼児の発症予防に繋がります。また、0歳児と1歳児に日常的に接する人は、RSウイルス感染症の流 行時期はもちろんのこと、流行時期でなくても、咳などの呼吸器症状がある場合は飛沫感染対策としてマスクを着用して0歳児、1歳児に接することが大切で す。接触感染対策としては、子どもたちが日常的に触れるおもちゃ、手すりなどはこまめにアルコールや塩素系の消毒剤等で消毒し、流水・石鹸による手洗いか 又はアルコール製剤による手指衛生の励行を行います。

Q7 治療方法はありますか。

A7 RSウイルス感染症には特効薬はありません。治療は基本的には対症療法(症状を和らげる治療)を行います。

Q8 ワクチン接種などの予防策はありますか?

A8 現在、ワクチンはありません。

その他の方法としては、遺伝子組換え技術を用いて作成されたモノクローナル抗体製剤であるパリビズマブ(Palivizumab)の投与があります。 RSウイルス感染症の流行初期に投与し始めて流行期も引き続き1か月毎に筋肉注射することにより、重篤な下気道炎症状の発症の抑制が期待できます。投与対 象患者となっているのは以下の方です。

  • 在胎期間28週以下の早産で、12カ月齢以下の新生児及び乳児
  • 在胎期間29~35週の早産で、6カ月齢以下の新生児及び乳児
  • 過去6カ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた24カ月齢以下の新生児、乳児及び幼児
  • 24カ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の新生児、乳児及び幼児
  • 24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児,乳児および幼児*
  • 24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児,乳児および幼児*

*本剤の添付文書では、投与に際しては学会等から提唱されているガイドライン等を参考とし、個々の症例ごとに本剤の適用を考慮すること、とされています。
なお、パリビズマブ製剤の投与は保険適用となっています。

<このQ&Aは、国立感染症研究所の先生方のご協力により作成しました>


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